姿勢・動作

運動戦略からバランス能力をみる

運動戦略 さむね

みなさん、『バランス』という言葉をよく臨床で使う人は多いですよね。

 

ただ

「バランスが悪いから」

「バランス能力の低下がみられる」

などといったことを何気なく使っていないですか?

 

BBSなどの評価を利用すれば、バランス能力を具体的に数値化し、良し悪しがわかると思います。

ただ、「バランス能力の低下」とわかっても、具体的なアプローチ方法までなかなか出てこないですよね。それだけ、『バランス』という言葉は、便利な言葉ですけど、抽象的な言葉でもあります

 

そのため、バランス能力を改善させるには、『バランス』をより具体的にみていく必要があります。

 

バランス能力に関与する要素は、6つあるといわれています。

①バイオメカニクス的側面(筋力・可動域など)

②運動戦略(ストラテジー、)

③感覚的側面

④認知的側面

⑤空間認知的側面

⑥動的な制御的側面

この6つの要素が関与しあって、バランス能力は決定します。

つまり、バランス能力が悪い場合はこの6つの内どの要素に問題があるのか、評価する必要があるということです。

 

なので、

今回は、6つの要素のうちの一つ、『運動戦略』の視点からバランス能力を考えてみましょう!

 

3つの運動戦略

人が姿勢制御をするにあたって主に用いられる運動戦略は、3つ

①足関節ストラテジー

②股関節ストラテジー

③ステッピングストラテジー

 

バランスをとるときは、

足関節ストラテジー → 股関節ストラテジー → ステッピングストラテジー

この順番で運動戦略が機能します。

 

 

上記以外にも、

◆リーチング戦略

→何かにつかまり支持基底面を新たに作り、バランスを保つ。

◆サスペンション戦略

→早い屈曲によって身体重心を下げたり、ロッキングによってバランスを保つ

などがあります。

 

しかし、基本的には上記の3つの運動戦略を環境や外乱の大きさによって使い分けることでバランスを保っています。

 

なので、今回は上記3つの運動戦略の特徴を説明していきます。

足関節ストラテジー

足関節ストラテジーは、

足関節部を支点とした運動によってバランスを保つ戦略です。

 

足関節ストラテジーが機能する場面はどんな状況なんでしょう?

【足関節ストラテジーが働く条件】

◆硬い床面でバランスをとるとき

◆比較的、小さな外乱が加わったとき   など

上記のように、比較的安定した条件や小さな外乱が加わったときに足関節ストラテジーを使ってバランスをとっています。

 

次に足関節ストラテジーの特徴について。

【足関節ストラテジーの特徴】

◆足関節周囲筋で調節

◆足関節からの上行性連鎖が中心

◆体性感覚に依存

大きな特徴としては、上記の3つがあげられます。

この特徴からわかるように、足関節周囲筋の機能がかなり重要になってきます。

 

実際に、足底筋が弱化することで足関節ストラテジーが適切に使えなくなるともいわれています。

 

つまり、

◆足関節周囲筋の筋力を向上させること

◆足関節周囲筋の反応性を高めること

◆足底筋の筋紡錘や足底の表在感覚による感覚情報を増やすこと

これらが足関節ストラテジーの機能が改善させるために重要なことだといえます。

 

股関節ストラテジー

股関節ストラテジーは、

股関節を支点とした運動によってバランスを保る戦略です。

 

股関節ストラテジーが機能する条件は何でしょう?

【股関節ストラテジーが働く条件】

◆柔らかい床面でバランスをとるとき

◆足長より短い支持基底面上でバランスをとるとき

◆比較的、大きな外乱が加わったとき

上記のように、

支持基底面が小さい場所や不安定な場所、大きな外乱がくわわったときに股関節ストラテジーが優位に働きます。

 

次に股関節ストラテジーの特徴について

【股関節ストラテジーの特徴】

◆股関節周囲筋でバランスを調節

◆股関節からの下行性連鎖が中心

◆前庭感覚に依存

足関節ストラテジーに対して、股関節ストラテジーは股関節周囲筋の機能が重要になります。

 

ステッピングストラテジー

ステッピングストラテジーは、

下肢のステップ動作によって、支持基底面を拡大してバランスを回復する戦略です。

 

ステッピングストラテジーが働く条件は何でしょう?

【ステッピングストラテジーが働く条件】

◆大きな外乱などにより身体重心が支持基底面の外にでたとき

 

ステッピングストラテジーは、上記2つとは異なり、重心が支持基底面の範囲を超えた場合に働き、新たに支持基底面を拡大しバランスを保つ運動戦略です。

 

次にステッピングストラテジーの特徴について

【ステッピングストラテジーの特徴】

◆支持基底面を増大すること

◆ステップした脚、リーチした上肢によってモーメントアームを増大させること

支持基底面を広げることとモーメントアームが増大することで、安定性が向上し、バランスを回復することができます。

 

このステッピングストラテジーが機能しないと、

身体重心が支持基底面を超える外乱が加わわるとバランスを回復することができずにそのまま転倒につながってしまいます

なので、転倒しないためにもステッピングストラテジーが適切に使えるかどうかは、

とても大切なことになります。

 

バランスの良い条件は?

では、バランスが良い状態は、どのような状態なんでしょうか?

 

端的にまとめると

足関節ストとラテジーが適切に機能することがバランスが良い状態です。

 

文献で報告されている内容も少しまとめてみましょう。

【高齢者の場合】

◆60歳以降になると足長に対する安定性限界が減少する。

60歳までは足長の60%、60歳以降は1/3まで減少するといわれています。

→股関節ストラテジーが働きやすい状態

 

◆転倒リスクが高い高齢者や転倒に恐怖心がある高齢者では、股関節ストラテジーが優位になっている。

 

【脳卒中患者の場合】

◆足関節ストラテジーより股関節・ステッピングストラテジーが多く使われている。

 

これらをまとめると

転倒リスクが高くなっている高齢者や脳卒中患者では、

足関節ストラテジーよりも股関節・ステッピングストラテジーが優位に働いているということです。

 

つまり、はじめにも言ったように

バランスが良い状態とは、足関節ストラテジーが適切に機能する必要があるということです。

 

 

声かけによって運動戦略が変化する?

この3つの運動戦略は、

環境によっても変化しますが、私たちの口頭指示によっても変化します。

 

文献によると

◆できるだけステップしないように指示した場合

足関節ストラテジー → 股関節ストラテジー → ステッピングストラテジーの順で働きます。

◆何も指示をしない場合

足関節ストラテジーを利用する幅が短くなり、指示した場合よりも早く股関節・ステッピングストラテジーが働きます。

◆バランスを崩しそうになったらステップするように指示した場合

股関節ストラテジーはみられず、早い段階でステッピングストラテジーが働きます。

上記のように、セラピストの指示によって患者の意識が変化し、機能する運動戦略も変化します。

なので、評価する際は、声かけは注意する必要があります。

◆足関節ストラテジーを見る場合

→ステップしないように指示

◆無意識下での足関節・股関節ストラテジーの機能を見る場合

→何も指示しない

◆ステッピングストラテジーを見る場合

→ステップするように指示

このように、見たい運動戦略によって口頭指示を変えましょう。

運動戦略の評価

最後に、この運動戦略をどのように評価していくか。

 

運動戦略を評価する際には、

患者を静的立位の状態でセラピストが患者に対して、患者の骨盤を持ち、前後左右に外乱刺激を加えてみましょう。

外乱刺激に対して、

どれくらいの範囲を足関節ストラテジーで制御が可能か、

どのタイミングで股関節ストラテジーがみられるか

を見ながら評価していきましょう。

その後、強い外乱刺激を加えて、ステップが出るかどうかを確認しましょう。

それに加えて、上記の口頭指示も変化させながら評価するとより細かく評価することができます。

 

さらにステッピングストラテジーの特徴として、

高齢者と若年者では、ステップ長が変化しない。

しかし、ステッピングストラテジーを使用しても、複数回ステップが必要であったり、一回目のステップの後に側方へのステップがみられる傾向がある

と言われています。

つまり、

ステップ長が一緒にも関わらず一度でバランスを回復できない場合は、バランスの能力が低下していることにつながります。

ステッピングストラテジーを評価する際は、一回のステップでバランスを回復できるかを見る必要があります。

 

評価する際に最も注目するポイントは、

足関節ストラテジーが機能する範囲がどれくらいかどうか

転倒の危険性の高い患者は、足関節ストラテジーが機能していない方が多いです。

なので、この機能がある程度大きな範囲で使えることがバランス機能をを見るうえで大切です。

まとめ

今回は、バランス能力を運動戦略の側面からまとめました。

運動戦略からバランス機能をみるポイントとしては、

◆足関節ストラテジーが機能すること

◆ステッピングストラテジーが一回のステップでバランスを回復できること

◆口頭指示によって運動戦略が変化すること

この3つに注目して、運動戦略を評価してみてください。

 

ただ、バランス機能は、運動戦略のみでなりたっていないので、感覚的側面や認知的側面が関与してきます。運動戦略は、バランス機能の一つの要因と考え、総合的に評価してみてください。

 

では、今回はここまで。ではでは~。

 

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