股関節

股関節の可動域制限因子は?可動域を改善させるための3つのポイント

股関節可動域改善

大腿骨頸部骨折、人工股関節全置換術(以下:THA)など股関節疾患において股関節の可動域制限が問題になる場面を多く経験すると思います。

股関節の可動域を改善させようと思っても、教科書通りにやってもなかなか可動域が変わらないって感じていませんか。

私もはじめは、可動域が変わらず、もちろん動作も変えられないという経験をしました。

 

今回は、そんな股関節の可動域を制限している因子をまとめ、明日の臨床から可動域の改善が可能となるように評価・治療するポイントについて書いていきます。

正常な股関節の動き

まずは、可動域改善のために必要な股関節の運動学についてです。

股関節は、寛骨臼と大腿骨頭からなる臼状関節です。

屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋と3軸方向への動きが可能です。

下記にそれぞれの方向への正常可動域を記します。

 

屈曲 125 外転 45 外旋 45
伸展 15 内転 20 内旋 45

これらは、純粋な1軸方向への運動を測定してものです。

複合的な運動

股関節には頚体角、前捻角というものがあります。

頚体角

前額面から見た際の大腿骨頭頸部と骨幹部がなる角度です。正常では125°あります。

前捻角

大腿骨を上から見た際、大腿骨頭頸部と骨幹部の角度であり、骨頭が前方へ向いている角度です。正常は、15~20°です。

頚体角と前捻角があるため、股関節の関節軸は、矢状面、前額面、水平面に対してまっすぐではないということです。

そのため、股関節に負担をかけずに関節軸に沿って動かすためには、3軸の複合的な運動が必要です。

 

具体的な複合的な運動方向は

 

屈曲+外転+外旋

伸展+内転+内旋

 

この複合的な動きが股関節にとって一番負担がかかりにくい運動といえます。

 

そのため、術後早期や股関節に痛みがある段階での可動域訓練では、股関節を傷めないためにも、この複合的な運動での関節可動域運動が重要です。

 

副運動

さらに関節が動く際は、副運動というものが起こります。

この副運動が阻害されると関節の可動性に大きく影響してきます。

 

では、股関節の大腿骨の副運動は、

 

運動方向 大腿骨副運動
屈曲 後方滑り 外転 下方滑り 外旋 前方滑り
伸展 前方滑り 内転 上方滑り 内旋 後方滑り

 

後でまた説明していきますが、特に問題となるのが大腿骨の後方滑りの運動です。

 

大腿骨盤リズム

股関節と骨盤は、隣り合っているため、動きは連動しています。

上腕骨と肩甲骨において上腕肩甲リズムがあるように、

大腿骨と骨盤においても

大腿骨盤リズム

があります。

 

大腿骨盤リズムとは

股関節を屈曲した際、屈曲10°までは、骨盤は前傾方向に動きます。

10~90°屈曲した際は、骨盤後傾、腰椎後弯方向へ動く。

股関節、骨盤、腰椎が合わせて動き、正常可動域である125°まで屈曲する。

 

実は、股関節のみの純粋な屈曲可動域は、約90°しかないんです。

大腿骨盤リズムによって、骨盤後傾、腰椎後弯が伴い、正常可動域125°まで動くということです。

 

ということは、

股関節の可動域を見るときは、骨盤・腰椎の動きも一緒に見る必要があります。

 

 

では、これらの股関節の運動学を踏まえたうえで、可動域制限の原因や評価法について説明していきます。

股関節屈曲制限の評価・治療ポイント

股関節屈曲制限に対して大きく問題となっているポイントは、3つ!

評価ポイント

・深層外旋六筋の柔軟性低下

・股関節前面筋の柔軟性低下

・腰椎骨盤の可動性低下

 

深層外旋六筋の柔軟性低下

深層外旋六筋は、THAにおいて切開されていることや、怪我前より骨盤が後傾しており股関節が外旋しているなどと様々な原因によって硬くなりやすい部分です。

 

実際、臨床でもここが硬い人達は多い。

 

深層外旋六筋は、梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋の6つ筋から構成されます。

 

深層外旋六筋は、骨盤から大腿骨の大転子に付き、大腿骨頭のすぐ後ろを通ています。

大腿骨頭の後ろにある深層外旋六筋が硬くなることで

 

股関節の運動軸が前方へ変位し、大腿骨頭の後方滑りが阻害されます。

 

後方滑りの阻害により、正常な股関節軸での運動ができなくなるため、屈曲可動域の制限が生じます。

 

また、大腿骨頭が前方へ変位することで股関節前面にある筋(腸腰筋、大腿直筋)へ過剰なストレスが加わります。

その過剰なストレスにより、股関節前面筋の柔軟性が低下し、さらに可動域が制限されます。

 

そのため、まず、第一に深層外旋六筋の柔軟性を確保し、股関節の運動軸を正常に戻すことが必要です。

大腿骨頭の前方変位

 

評価方法

まずは、股関節内旋可動域を測定してみましょう。

その後、触診にて実際に筋肉が硬いのかどうかを確認してみてください。

 

股関節前面筋の柔軟性低下

股関節前面筋が屈曲制限の問題となる場合は、

主に屈曲時に股関節前面に痛みがみられる場合が多いです。

股関節を屈曲した際に、硬くなった股関節前面筋のインピンジメントが起こり痛みが生じます。

 

 

深層外旋六筋の柔軟性低下することで

大腿骨頭が前方へ変位し、股関節前面筋であるを腸腰筋、大腿直筋に過剰なストレスが加わる状態になります。

それにより、腸腰筋、大腿直筋の柔軟性が低下します。

 

腸腰筋が柔軟性が低下することで、筋の機能も低下してしまいます。

腸腰筋の機能不全により、姿勢制御をするために、2関節筋である大腿直筋、大腿筋膜張筋の過剰に働き、柔軟性が低下し、さらなる可動域の制限が生じます。

 

そのため、痛みがみられる場合は、腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋の柔軟性の向上に合わせ、深層外旋六筋の柔軟性、腸腰筋の機能改善が必要になってきます。

 

評価方法

どの筋が硬くなっていて、痛みが発生しているのか確認しないといけません。

そこで、触診と合わせて、整形外科的テストを使用し、評価していきます。

腸腰筋→Tomas test

大腿直筋→Ely test、踵殿距離テスト

大腿筋膜張筋→Over test

 

腰椎・骨盤の可動性低下

股関節の動きに合わせてみておきたいのが、腰椎・骨盤の可動性。

 

臨床では、この腰椎後弯と骨盤後傾の可動性が低下している患者も多いです。

特に高齢の男性。

 

上記の股関節の動きで説明したように、股関節の運動には大腿骨盤リズムがあります。

股関節を屈曲する際、腰椎、骨盤は一緒に動くというやつです。

股関節のみの可動域は、約90°しかないので、股関節の動きをどんだけよくしても90°までしか屈曲しません。

 

なので、腰椎後弯、骨盤後傾の可動性を拡大させることでさらに可動域の拡大が可能となります。

 

評価方法

腰椎の後弯の評価の評価 → PLF(腰椎後弯可動性)テスト

背臥位で股関節屈曲可動域を測定する際、骨盤を固定したときの屈曲可動域と固定しないときの可動域の比較することでも、腰椎‐骨盤に原因があるのか、股関節に原因があるのか評価することも可能です。

 

α大殿筋、中殿筋の柔軟性低下

上記の3つが最も臨床において最も大きく影響してくるポイントです。

しかし、これだけで改善しない症例もいます。

 

そんな時は、

股関節の伸展筋である、大殿筋、中殿筋(後部繊維)の柔軟性を評価してみください。

 

股関節屈曲により、伸張されるため柔軟性低下していることで制限因子となります。

評価方法

股関節屈曲+外転+外旋方向から内転+内旋方向に動かしたときの制限が大きいのか確認します。

純粋な屈曲の方が、大殿筋、中殿筋が伸張されるため制限が大きくなる場合制限因子となっている場合が多いです。

合わせて触診を行います。特に腸骨稜、転子部が硬くなりやすいため、確認してみてください。

 

股関節伸展制限の評価ポイント

次に股関節伸展制限において大きく問題点になっているのは、2つ。

 

評価ポイント

・股関節前面筋の柔軟性低下

・深層外旋六筋の柔軟性低下

 

では、伸展制限に対しても原因と評価について説明していきます。

股関節前面筋の柔軟性低下

股関節を伸展した際、股関節前面筋は、伸張されるため、柔軟性が低下していると可動域の制限因子となります。

臨床においても、股関節前面筋は、硬くなりやすいので伸展制限に大きくかかわることが多い。

 

股関節前面筋でも特に、硬くなりやすく制限の因子になるのが、

 

腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋

 

大腿骨頭の前方変位があると腸腰筋には、過剰なストレスが加わるため、硬くなりやすく、機能不全に陥りやすいです。

その代償として、大腿直筋、大腿筋膜張筋が過剰に働き、硬くなります。

そうして、硬くなった筋が伸展制限の制限因子となっていることが多いです。

 

そのため、腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋の柔軟性向上に加えて、腸腰筋の機能改善が必要です。

 

評価方法

まずは、触診にて筋の硬さを確認します。

触診に合わせて整形外科テストを行い評価していきます。

腸腰筋→Tomas test、膝関節伸展位での股関節伸展制限

大腿直筋→Ely test、踵殿距離テスト、膝関節屈曲位での股関節伸展制限

大腿筋膜張筋→Over test

 

深層外旋六筋の柔軟性低下

伸展制限でも、深層外旋六筋の柔軟性低下は、影響してきます。

 

深層外旋六筋の柔軟性低下がみられることで、骨頭の前方変位が生じます。そのため、正常な股関節の運動から逸脱した状態で動くことになります。

 

大腿骨頭の前方にある腸腰筋、大腿直筋は、常に過剰なストレスを受けている状態であるため、硬くなりやすい状態を作ってしまいます。

 

そのため、

腸腰筋、大腿直筋の柔軟性を向上させてもまたすぐに硬くなり、元に戻ってしまう

ということです。

元に戻ったら、なかなか伸展制限が改善されません。

 

なので、深層外旋六筋の柔軟性も合わせて、確保しておきたいです。

 

評価方法

まずは、股関節内旋可動域を測定してみましょう。

その後、触診にて実際に筋肉が硬いのかどうかを確認してみてください。

 

まとめ

股関節の可動域制限を改善するうえで大切なポイントは3つ。

・深層外旋六筋の柔軟性

・股関節前面筋の柔軟性

・骨盤‐腰椎の可動性

 

可動域を評価する際は、まずこれらを見てみてください。

 

まとめてみた結果、股関節の屈曲、伸展可動域を改善ためには、内外転、内外旋に作用する筋が原因になることが多いの股関節の全方向の可動域の改善が必要ですね!

 

もう一つワンポイントアドバイス!

可動域を拡大した後は、必ず運動を行ってもらい、拡大した可動を含め自分で使ってももらうようにしてくださいね!