変形性膝関節症や膝関節の手術後において、
よく問題となるのが可動域制限です。
膝が伸びない、曲がらないことは、日常生活動作において問題となります。
なので、臨床においても可動域を改善させなけらばいけないことは、多いのではないでしょうか?
ただ、曲げる、伸ばすだけではなかなか改善しません。
そこで、今回は膝関節の屈曲可動域を改善させるために、
屈曲を制限する因子についてまとめていきたいと思います。
Contents
膝関節の屈曲に必要な動き
まずは、
膝関節に必要な関節の動きについて解説していきましょう!
膝関節は、
大腿骨と脛骨から構成される脛骨大腿関節(以下:FTjt)
大腿骨と膝蓋骨から構成させる膝蓋大腿関節(以下:PFjt)
この2つの関節から成り立ちます。
膝関節が動くには、FTjtとPFjtのどちらも動く必要があります。
どちらの動きも知っておきましょう!!
PF関節の動き
PFjtは下記の図のように膝関節屈曲に伴い、上下に移動し大腿骨との接触部位を変化させます。
大腿骨に対する膝蓋骨の接触部位
屈曲20°→下方
屈曲45°→中央
屈曲90°→上方
屈曲135°→内外側
常に接触部位が変化するということは、
膝蓋骨が上下に動いているということです。
さらに、左右の筋の不均衡により、左右に変位することもあります。
そうすると、関節の運動軸が変化するため、上下の動きも阻害されます。
なので、膝関節が動くためには、
膝蓋骨が全方向に動くことが大切になります。
FT関節の動き
FTjtが膝関節屈曲時に必要な動きは、2つあります。
◆下腿の屈曲+内旋
◆Roll back機構
下腿の屈曲+内旋
膝関節が屈曲するためには、屈曲に加えて、下腿の内旋が必要になります。
ただ、まっすぐ屈曲するわけではないということです。
回旋の動きも合わせて、必要になります。
臨床では、下腿外旋症候群があるように、下腿が過外旋している人が多いです。
そのような人は、
下腿が外旋位で固定されており、内旋への動きがでず屈曲が制限されていしまっています。
その場合、下腿を内旋方向へ誘導しながら屈曲することが制限を改善するのに有効になります。
Roll back機構
Roll back機構とは、
膝関節屈曲に伴い、下腿が前方へ移動することを言います。
このRoll back機構には、後十字靭帯(以下:PCL)の働きが影響します。
膝関節を屈曲しいていくとPCLが大腿骨の後方巻き付く形となり、緊張します。PCLが緊張することで、脛骨の後方移動が制御され、下腿が前方移動します。
◆PFjtが全方向へ動くこと
◆FTjtの2つの動きがみられること
この2つ関節が適切に動くことで膝関節が屈曲することができます。
屈曲を制限する組織は?
では、膝関節の屈曲する制限する組織についてまとめてみましょう。
屈曲を制限していることが多い因子を下記に示します。
◆筋:大腿四頭筋
◆膝周囲組織:膝蓋上嚢、膝蓋下脂肪体
◆関節内運動:下腿の内旋、下腿の前方移動
◆皮膚:膝蓋骨上部付近
筋:大腿四頭筋
屈曲制限で最も制限因子となる筋は、大腿四頭筋です。
特に、大腿直筋、内側広筋、外側広筋の柔軟性は低下していることが多いです。
大腿直筋が制限因子
大腿直筋は、
股関節周囲筋が機能不全に陥っていたり、
膝関節が常に屈曲位の場合に、
過緊張となっていることが多い筋です。
その過緊張によって柔軟性が低下していることが多いです。
評価としては、エリーテストがあります。陽性の場合、大腿直筋の短縮が考えられます。
また、股関節の肢位を変化させて膝屈曲可動域の差を見てみましょう。
◆股関節伸展位で膝関節の屈曲制限が強くなる場合 → 大腿直筋の短縮
◆股関節屈曲位と伸展位で変化なし → 大腿広筋群の短縮
が考えられます。
アプローチとしては、過緊張となる原因を改善しないといけません。
なので、大腿直筋のストレッチに加えて、
股関節周囲筋の機能改善や膝関節伸展制限を改善することで大腿直筋の過緊張が改善されます。
内側広筋・外側広筋が制限因子
膝OAは、内側広筋は萎縮、外側広筋は過緊張に陥っていることが多いです。
そのためどちらも、柔軟性が低下していることが多いです。
アプローチとしては、大腿広筋群へのストレッチに加え、
内側広筋が委縮していて、外側広筋が過緊張していることが多いため、
内側広筋を選択的に収縮させ、機能改善を図る必要があります。
内側広筋を選択的に収縮させる方法
◆股関節内転筋に力を入れながら行う
◆股関節外転外旋位で行う
◆徒手的に膝蓋骨を内側に誘導しながら行う。
上記を意識したパテラセッティングや膝伸展運動が有効です。
膝周囲組織:膝蓋上嚢、膝蓋下脂肪体
膝蓋上嚢と膝蓋下脂肪体は、膝周りの組織で特に硬くなりやすい組織です。
この2つの組織は、膝蓋骨の可動性を制限します。
膝蓋骨の上下の可動性を評価し、膝蓋骨の上部・下部の組織の硬さを確認してみましょう。そして、上下の組織の柔軟性がしっかりと確保してあげましょう。
膝関節伸展位で、上下左右に動かしてみましょう!
動きが制限されている方向と反対の組織の柔軟性が低下していることが考えられます。
関節内運動:下腿の前方移動、下腿の内旋
関節内運動で阻害されやすいのが下腿の前方移動と内旋です。
下腿の前方移動
膝関節屈曲には、PCLによるRoll back機構が必要です。
PCLが緩くなっている場合、Roll back機構が機能せず、脛骨の前方移動が起こらない場合があります。
膝窩部に手を挟み、脛骨が後方に落ち込まないように誘導しながら、膝関節を屈曲させてみましょう。
下腿の内旋
臨床では、
下腿が過外旋していること や 下腿が外旋位で固定されている
人が多いです。
なので、過外旋へ誘導している組織をリリースし、内旋方向に動かすこと必要になってきます。
下腿の内旋を制限する因子をあげてみましょう。。
『膝関節屈曲時に下腿の内旋を制限する因子』
◆腸脛靭帯、外側広筋、外側ハムストリングス、腓腹筋内側頭の短縮
◆内側ハムストリングスの弱化
上記の組織が原因となっている場合が多いです。
これらの組織をしっかりと触診し、硬さを確認してみましょう。
◆外側の組織をリリース
◆内側ハムストリングスの強化
◆下腿を内旋誘導しながら屈曲
これらを意識しながら、アプローチしましょう。
皮膚:膝蓋骨上部付近
皮膚が可動域制限となる場合は、手術後が多いです。
特に、人工膝関節置換術(TKA)後では、膝蓋骨の上部に大きな術創部ができ、制限因子となりやすいです。
さらに、可動域制限の原因の割合として、
関節構成体 45%
筋 40%
皮膚 15%
といわれています。
15%ということは、結構割合として大きいですよね。
皮膚の柔軟性を評価し、柔軟性を確保することも大切になってきます。
術後早期から術創部に対して過度に離開する伸張ストレスを与えすぎると瘢痕の肥厚化を招く可能性があります。つまり、硬くなってしまうということです。
皮膚が修復するのに約2週間といわれています。
なので、2週間は無理に術創部を引っ張りすぎないようにしましょう。
その他の制限因子
上記で示した、筋や組織以外にも制限因子となるものがあります。
下記に記しましょう。
◆疼痛
◆腫脹・浮腫
◆骨性
疼痛
痛みがある場合、可動域を制限する因子となります。
この場合は、疼痛を軽減させるアプローチが必要になります。
また、滑膜の炎症 や 手術後の炎症期による痛みの場合は、可動域訓練よりも安静が必要になります。
腫脹・浮腫
浮腫・腫脹は、手術後や膝関節の炎症が起こっている場合に生じます。浮腫・腫脹は、可動域を制限する因子の一つとなります。
さらに、浮腫・腫脹がある場合に膝関節伸展+外旋位を取ると関節内圧が上昇し、痛みがあっせする原因にもなります。
なので、下肢を挙上させるなど浮腫・腫脹を早期に改善できるようにアプローチが必要になります。
骨性
変形性膝関節症では、重症になり関節自体が変形している場合があります。
その場合、可動域のend feelが硬く、骨と骨が衝突し、可動域を制限している場合があります。
可動域制限が骨性の場合は、理学療法では、どうすることもできません。
なので、無理に可動域を拡大しないようにしましょう。
無理にやってしまうと逆に悪化させる要因になってしまうので注意してください。
まとめ
今回は、膝関節の屈曲可動域を制限している因子についてまとめました。
今回のポイントは、
◆膝蓋骨が全方向に動くこと
◆下腿の内旋、Roll back機構が機能すること
PFjtとFTjtが機能的に働くようにしてあげることが大切です。
なので、上記の動きが何によって制限されているのか評価し、治療しましょう。
そのために治療の手助けになれば、幸いです。
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