脳卒中

脳卒中の感覚障害をどう評価し、どうとらえる?

感覚障害

脳卒中のリハビリで、みんな必ずやるのが感覚の評価。

その感覚の評価の結果をどう捉え、何を考えていますか?

感覚障害のある患者がいて、ただ、『感覚が悪いから、歩くとふらつく』とか、言ってないですか?

 

感覚でも、視覚、聴覚など様々な感覚があります。

私たちが臨床で感覚の評価をしているのは、体性感覚という感覚です。

簡単に言うと、皮膚や筋からの感覚情報です。

 

運動において最も重要になる感覚です。

そのため、今回は、感覚でも体性感覚についての話です。

 

体性感覚でも、表在・深部感覚、意識にのぼる感覚・のぼらない感覚と種類があり、感覚経路も違います。

感覚の種類・経路を知ることで、感覚障害の捉え方や見るポイント、評価の仕方が変わってきます。

今回は、感覚について、まとめていきます。

体性感覚とは?

体性感覚の種類としては、

 

表在感覚

深部感覚

 

の2種類あります。

 

表在感覚としては

触圧覚、温覚、冷覚、痛覚など

があります。

 

つまり、

誰かに触られている感じ(触覚)、

熱い・冷たい(温覚、冷覚)、

痛い(痛覚)

といった感覚が表在感覚になります。

 

深部感覚としては、

位置覚、関節覚、筋の筋紡錘からの感覚など

があります。

 

では、ここで

深部感覚には、

意識にのぼる感覚(意識下)

意識にのぼらない感覚(無意識下)

の2種類あることを知っていましたか?

 

実は、私たちが

頭で理解することができる意識下の感覚と

頭では認識することができない無意識下の感覚

の2つがあるんです。

 

意識にのぼる感覚としては、

位置覚、関節覚

があります。

 

足の位置がわかるかどうか(位置覚)、

関節が曲がっているか伸びているかわかるかどうか(関節覚)

といった感覚です。

 

これらは、筋紡錘などからの情報で

意識にのぼる感覚であるため、

自分で認識できます。

 

そのため、

学校で習う深部感覚の検査は、

基本的に相手が認識しているため、意識下の深部感覚検査なんです。

 

 

意識にのぼらない感覚としては、

筋紡錘からの感覚

があります。

 

この感覚は、意識にのぼらないため、私たちには、認識できません。

 

この感覚を感知している例として、

スマホを使っているときを取り上げてみましょう。

 

立ってもしくは、歩きながらスマホを使っているとき、

足に体重がかかっているっていうことを考えながら、スマホを使っていますか?

基本的に無意識に姿勢を保持していますよね?

 

 

この時に足底筋の筋紡錘の変化を無意識下の感覚として感知しています。

そうすることで、微妙な揺れなどを感知し、姿勢を保持しています。

 

このように意識にのぼらない深部感覚を常に感知しいます。

 

私たちの生活では、

座って何かをしたり、立って何かをしたり、歩きながら何かをしたりと、

無意識に動いたり、姿勢を保持することが多いです。

 

そのため、姿勢を保持したりするために

この意識にのぼらない感覚は、かなり重要な感覚情報なんです。

 

体性感覚が重要な理由

では、体性感覚がなぜ、運動に重要なのか?

感覚情報と運動の関係として重要なポイントが

  • 感覚情報により姿勢制御を行っている
  • 感覚情報により運動の修正・学習を行っている。
  • 体性感覚がバランスをとるうえで最も重要な感覚である。

 

姿勢制御

感覚情報は、姿勢制御に大きく関与しています。

 

簡単に説明すると、

皮膚や筋からの感覚情報が大脳皮質の一次感覚野に投射されます。

その感覚情報は、Body Schema を変化させ、

その情報を補足運動野(6野)に投射されます。

 

補足運動野に投射された情報をもとに予測的姿勢制御(apa’s)が働き、

姿勢の調節を行います。

 

体性感覚の情報がないと

この姿勢制御(apa’s)の機能が働かず、

安定した姿勢での動作が困難となってしまします。

 

姿勢制御と感覚情報の関係については、

下記の記事に詳しくまとめてありますので、参考に見てみてください。

 

運動の修正・学習

深部感覚、つまり筋からの感覚情報によって運動の修正・学習が行われています。

 

感覚情報は、

運動学習における大脳皮質‐小脳回路に関係してきます。

 

筋からの深部感覚によって、小脳へエラーシグナルが投射されます。

大脳皮質からの運動モデルの情報とエラーシグナルの情報を統合します。

統合した情報をもとに運動モデルを修正し、大脳皮質へフィードバックされます。

そして、

フィードバックされた運動モデルをもとに運動が実行され、実際の運動が修正されます。

 

そして、繰り返し、誤差の修正を行うことで

運動の自動化や手続き記憶にとして、運動が学習されます。

 

運動学習については、

下記の記事に詳しくまとめてあるので参考にしてみてください。

 

バランス機能

バランス機能を見るうえで、一つの指標となるのが

感覚情報の重みづけ

です。

 

感覚情報の重みづけ

体性感覚、視覚、前庭感覚の3つの感覚情報をもとに姿勢を制御している。

この3つの感覚の情報量を中枢神経系で調節している。

 

感覚情報を重みづけの例として、

  • 不安定な場所(リハ室では、バランスマットなど)に立つと視覚・前庭感覚が優位となり、体性感覚の依存性は、低くなります。
  • 暗い場所だと視覚は、利用しにくいため、体性感覚・前庭感覚が優位となり、視覚の依存性は低くなります。

 

このように、

動作や環境によって、この3つの感覚情報の割合を変化され、姿勢を制御しています。

 

バランスが良いのは、どのような割合でしょうか?

 

バランスが良い状態だと、

体性感覚の割合が最も多く、次いで前庭感覚、視覚となります。

 

つまり、

バランス機能には体性感覚が欠かせないものであり、

感覚障害により前庭感覚・視覚が優位となった場合には、バランス能力は低下し、転倒の危険性も高くなるということです。

 

そのため、

体性感覚情報は、バランスをとり安定した状態で生活するうえで重要となります。

 

表在感覚

体性感覚の1つである、

表在感覚

の種類と経路についてまとめていきましょう。

 

表在感覚の経路は、2つ

表在感覚の神経経路

外側脊髄視床路(温痛覚)

前脊髄視床路(触圧覚)

 

  • 外側脊髄視床路

この経路は、主に温痛覚を感知する神経経路です。

熱い、冷たい、痛いといった感覚ですね。

 

神経の経路は、

後根 → 後角 → 白交連交差 → 前側索上行 → 視床(VPM、VPL)

→内包後脚(上視床放線) → 一次感覚野(3b)

 

外側脊髄視床路は、

脊髄で交差し、反対側の感覚野へと投射されます。

 

視床の

VPMには、頭部・頸部

VPLには、四肢・体幹

の感覚が投射されます。

 

  • 前脊髄視床路

この回路は、触圧覚を感知する経路です。

触圧覚でも、主に粗大触圧覚を感知します。

ものに触った、触れたという感覚のみ感知し、これがどのようなものかや、触れた場所まで細かく特定することはできません。

 

神経の経路は、

後根 → 後角 → 白交連交差 → 前索上行 → 視床(VPM、VPL)

→ 内包後脚(上視床放線) → 一次感覚野(3b)

 

前脊髄視床路も

脊髄で交差し、反対側の感覚野へ投射します。

 

この経路でも同様に視床の

VPMには、頭部・頸部

VPLには、四肢・体幹

の感覚が投射されます。

 

外側脊髄視床路と異なるのは、脊髄を上行する場所です。

外側脊髄視床路は、前側索

前脊髄視床路は、前索

を上行します。

 

深部感覚

続いて深部感覚についてまとめていきましょう。

 

深部感覚には、

意識にのぼる感覚 と 意識にのぼらない感覚

があります。

 

それらの神経経路は、異なります。

 

意識にのぼる深部感覚は、

長後索路

 

意識にのぼらない深部感覚は、

脊髄小脳路

 

脊髄小脳路は、

上肢・下肢で神経経路があり、

さらに

交差するもの と 交差しないもの

があります。

 

そのため、細かく分けると、脊髄小脳路は4つあります。

 

それらをまとめると深部感覚の経路は、下の図のようになります。

深部感覚の神経経路

【意識にのぼる深部感覚】

長後索路

【意識にのぼらない深部感覚】

後脊髄小脳路(下肢・非交差)

前脊髄小脳路(下肢・交差)

副楔状束核脊髄路(上肢・非交差)

吻束脊髄小脳路(上肢・交差)

  • 長後索路

意識にのぼる深部感覚の経路。

位置覚、関節覚、振動覚などがこの経路を通ります。

 

私たちが良く、臨床でも検査するやつですね。

意識にのぼるため、相手もこの感覚を認識することができ、検査で答えられます。

 

もう一つこの経路にてわかる感覚が

精細触圧覚です。

これは、どのようなものが、どこに触れているのか細かく特定できる触圧覚です。

 

神経の経路は、

後根 → 後索 → 薄束・楔状束 → 延髄交差 → 視床(VL)

→ 内側毛帯 → 視床(VPM、VPL) → 一次感覚野(3a)

 

長後索路は、

延髄で交差し、反対側の感覚野へ投射しいます。

 

延髄で交差する前の薄束・楔状束では、通る感覚が異なります。

薄束が下肢 

楔状束が上肢

の深部感覚が上行します。

 

この経路を通るのは深部感覚であるため、一次感覚野の3a野に投射します。

 

  • 後脊髄小脳路

この経路は、

下肢の意識にのぼらない深部感覚を感知します。

この経路は、交差しないことが特徴です。

 

後根 → 後索 → 胸髄核 → 同側側索 → 小脳(同側中位核)

→ 視床(VL) → 内包後脚(上視床放線) → 一次感覚野(3a)

後脊髄小脳路は、

交差せずに、小脳にある同側の中位核を通り、

視床のVLを経由し、同側の感覚野へ投射されます。

 

この経路は、小脳の中位核を通ります。

中位核からの情報は、視床のVLだけでなく、赤核にも投射されます。

 

赤核に投射されることで、赤核脊髄路が促通されます。

赤核脊髄路は、外側皮質脊髄路(錐体路)と似た経路であるため、同様の役割があるとされています。

そのため、

赤核脊髄路が働くことで、

動作中の姿勢制御(Aapa’s)や末梢の部位(手指など)の動きの制御が補足されます。

 

  • 前脊髄小脳路

この経路は、

下肢の意識にのぼらない深部感覚を感知します。

さらに、この経路は、小脳で交差する経路があることが特徴です。

 

後根 → 後角 → 白交連交差 → 前索 →小脳(対側室頂核)     

                   ↘ 再交差 → 小脳(同側室頂核)

→視床(両側のVL) → 一次感覚野(3a)

前脊髄小脳路は、

一度、脊髄で交差し、対側の前索を上行します。

前索を上行した情報は、対側の小脳(室頂核)への投射と

再交差し、同側の小脳(室頂核)への投射します。

 

つまり

両側の小脳(室頂核)へ情報が投射されます。

 

両側の小脳(室頂核)の情報は、それぞれ視床(VL)を経由し、

両側の感覚野(3a)に投射されます。

 

この経路は、交差することで、両側の感覚野へ情報を投射しているということです。

 

両側の感覚野へ投射されるため、

動作を行う際、両側の補足運動野からの予測的姿勢制御(apa’s)機能が働きます。

 

そのため、

深部感覚をハンドリングなどを利用し、この経路に対する感覚入力により、

より多くの網様体脊髄路を賦活することが可能となり、

姿勢制御の機能の改善や体幹機能の改善が可能ということです。

 

なので、この経路からの情報は、とても重要といえます。

 

  • 副楔状束脊髄小脳路

この経路は、

上肢の意識にのぼらない深部感覚を感知します。

この経路は、交差しないことが特徴です。

 

神経の経路は、

後根 → 後索(楔状束) → 小脳(同側中位核)→ 視床(VL) 

→ 内包後脚(上視床放線) → 一次感覚野(3a)

副楔状束核脊髄路は、

楔状束を通り、交差せずに、小脳にある同側の中位核、

視床のVLを経由し、同側の感覚野へ投射されます。

 

この経路も小脳の中位核へ投射されるため、

前脊髄小脳路と同様に

赤核脊髄路を促通し、

動作中の姿勢制御(Aapa’s)や末梢の部位(手指など)の動きの制御が補足されます。

 

  • 吻束脊髄小脳路

この経路は、

上肢の意識にのぼらない深部感覚を感知します。

さらに、小脳で交差する経路があることが特徴です。

 

神経の経路は、

 

後根 → 後角 → 白交連交差 →小脳(対側室頂核)     

                ↘ 再交差 → 小脳(同側室頂核)

→視床(両側のVL) → 一次感覚野(3a)

吻束脊髄小脳路も前脊髄小脳路と同様に

脊髄で一度、交差しますが、小脳で再交差し、

それぞれの視床(VL)を経由し、両側の感覚野へ投射します。

 

両側の感覚野へ投射されるため、

動作を行う際、両側の補足運動野からの予測的姿勢制御(apa’s)機能が働きます。

前脊髄小脳路と同様に

この経路からの情報は、とても重要といえます。

 

 

ここで深部感覚の経路をまとめましたが、

意識にのぼる感覚 と のぼらない感覚の経路の違いは、

小脳を経由するかどうかです。

 

なので小脳の障害では、

評価上では、感覚障害はなしでも

実際は、意識にのぼらない深部感覚の障害があるかもしれないということです。

 

臨床において感覚を評価する?

では、それぞれをどのように評価していくかをまとめていきましょう。

表在感覚

  • 外側脊髄視床路

外側脊髄視床路は、温痛覚の経路です。

痛覚検査

針などを使用し、皮膚を軽く刺激します。

痛みを感じるかどうかを評価します。

10回中何回正解できたかを評価すると客観的評価が可能です。

 

温度覚

温水(40℃前後)、冷水(10℃前後)が入った容器を用意します。

どちらかを3秒くらい当てて、「温かい」か「冷たい」かを答えてもらいます。

10回中何回正解したかを評価すると客観的評価が可能です。

 

  • 前脊髄視床路

前脊髄視床路は、触圧覚の経路です。

触圧覚

目をつぶってもらった状態で、評価部位を触り、だいたいどこら辺を触られているのがわかるかどうか検査します。

10回中何回正解できるかみることで客観的評価が可能です。

 

深部感覚

  • 長後索路

長後索路は、意識にのぼる深部感覚の経路です。

位置覚

目を閉じた状態で、検査側の四肢を他動的に動かし、反対側で同じような位置をとれるかどうか評価する。

5回中何回正解できたかを見ると客観的評価は可能である。

 

関節覚

特定の関節を動かし、動かした方向を答えてもらう。

5回中何回正解できたか見ると客観的評価が可能となる。

 

  • 脊髄小脳路

脊髄小脳路は、意識にのぼらない深部感覚の経路である。

現在、この意識にのぼらない深部感覚だけを評価する方法は、ありません。

そのため、

脳画像の障害部位や評価結果を組み合わせて推測する必要があります。

 

深部感覚を評価するために行ういくつかの評価をあげていきます。

座位保持の評価

まず、座位保持が可能かどうかを評価します。

座位保持は、基本的に無意識に行っており、坐骨や筋からの感覚によって保持しています。

保持が可能であれば、意識にのぼらない深部感覚の障害は、少ない可能性があります。

また、

座位保持が困難な場合は、坐骨や筋からの感覚を感知することができないことが考えられ、脊髄小脳路の障害があることが考えられます。

 

ロンベルグ試験

目を閉じた状態で立位保持してもらい、動揺が大きくなるか評価します。

動揺が大きくなる場合は、陽性となります。

目を閉じるため、視覚を遮断した状態での保持となります。

そのため、体性感覚・前庭感覚が優位となるため、体性感覚が低下していると動揺はおおきくなります。

そのほかの評価との組み合わせる必要は、ありますが感覚検査では、あまり問題がないのに動揺が多くなる場合は、意識にのぼる深部感覚の障害の可能性が考えられます。

 

そのほかにも、

立ち上がりの際、どちらの足を後ろに引いて優位に立ち上がるかや

歩き始め目の一歩目をどちらの足から出すか など

動作を観察し予測しています。

 

客観的な評価はないですが、様々な評価を組み合わせて評価することで、

意識にのぼらない深部感覚の障害があるかないか予測することができます。

 

動作において、座位保持や立位保持は、無意識に行われていることがほとんどである。

そのため、この意識にのぼらない深部感覚を感知し、適切な姿勢制御を働かせる必要があります。

そのため、意識にのぼらない深部感覚が障害されているかどうかを予測することは、とても重要になってきます。

 

まとめ

今回は、感覚についてまとめました。

今回のポイントは

  • 体性感覚には、表在感覚と深部感覚があります。深部感覚には、意識にのぼるものとのぼらないものがあるということ
  • 意識にのぼらない深部感覚は、小脳を経由する
  • 無意識下での動作が多いため、意識にのぼらない深部感覚は重要な感覚である。
  • 感覚障害によって、姿勢制御の障害、運動学習障害、バランス障害がみられる。

普段より、意識にのぼる表在感覚、深部感覚は、評価していると思います。

 

それ以外にも小脳を経由する意識にのぼらない深部感覚があり、

無意識下で行っている座位保持、立位保持などに多いく関与しています。

 

また、感覚が障害されると、姿勢制御の障害や運動学習の障害、バランス障害などの症状も見られます。

そのため、このような症状がみられる場合は、感覚の障害も検討する必要があります。

 

感覚障害によって起こる障害を具体的にとらえ、

意識にのぼらない深部感覚の障害の有無を考えることで

より症状の原因を細かく評価することができ、アプローチ方法の考え方も幅広くなると思います。

 

感覚について評価する際は、

今回の内容を参考にしてみてください。

 

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