脳卒中

運動学習のメカニズムを解説~小脳と基底核の役割とは~

運動プログラム

今回は、運動学習のメカニズムについて。

 

運動学習には、大きく分けて2つの大きな回路が関与してきます。

その2つが、

大脳皮質小脳回路、大脳皮質基底核回路です。

 

これらの回路は、運動の学習に加えて、運動をプログラムするのに重要な回路です。

 

そのため、

基底核や小脳が障害部位があると

この2つの経路が障害され、運動学習がうまく進まないことや、

さらに実際の失調、運動の遅延など症状としても現れることがあります。

 

そんな運動学習のメカニズムを神経回路の説明や、回路の役割・症状について

説明していきたいと思います。。

 

大脳皮質ー小脳回路

大脳皮質-小脳回路の役割

大脳皮質―小脳回路は、

運動皮質からの情報と運動に関する抹消からの感覚情報を統合して、運動を適正化する役割を果たす。

引用:市橋則明 運動療法学 第2版 文光堂、139 2008

と言われています。

 

つまりこの回路は、

大脳からの運動指令と筋からの感覚情報を照らし合わせ、違いがあった場合、より適した運動に修正する役割があるということです。

ということです。

 

運動学習において小脳は、

  • 運動モデルを記憶
  • 無意識下の深部感覚の感覚情報を受ける

する役割を担っています。

 

小脳では、

大脳皮質からの運動指令がどのような動作を引き起こすか(順モデル)

ある動作を行うためにどの運動指令を出せばよいか(逆モデル)

という情報が運動モデルとして記憶されます。

 

この情報が記憶されることで、

どうやったら動作が実行できるか頭の中に入っているということです。

 

そのため、大脳皮質‐小脳回路は、

動作を行う前にどうしたら実行できるかを記憶された運動モデルから引き出し、

状況に合わせた予測的な筋活動が得られるように調節する役割を果たします。

つまり、

フィードフォーワードの機能としも働きます。

 

 

また、小脳は、無意識下の深部感覚の情報を受けます。

そのため、大脳皮質からの運動指令と感覚情報を照らし合わせ、正しい運動ができたかを検証することができます。

もし、運動指令と感覚情報に誤差があった場合、

感覚情報をもとにエラーを感知し、運動の修正・制御を行います。

 

さらに何度も動作繰り返し、誤差の修正を行うことで、

運動が自動化する役割も担っています。

 

運動が自動化することで、手続き記憶にも関与してきます。

 

大脳皮質ー小脳回路の役割をまとめると

大脳皮質‐小脳回路の役割
  • 状況に合わせた予測的な筋活動の調節 (フィードフォーワード)
  • 運動実行中の修正・制御(フィードバック)
  • 手続き学習(無意識的な運動スキルの習得)
  • 運動の自動化

 

大脳皮質‐小脳回路の障害・症状

この回路が障害されることで

フィードフォーワード機能フィードバック機能がともに障害される。

 

フィードフォーワード機能が障害されることで、

予測された筋活動の微調節が困難となります。

これにより、重さ、大きさ、形などに合わせて、ものを動かすことが難しくなります。

それにより、力を入れすぎたり、持った時に手の形があっていなかったりといった症状がみられます。

 

フィードバック機能が障害されることで

筋からの深部感覚と大脳皮質からの運動指令との統合に障害がみられます。

これにより、運動の修正・制御が困難となり、

運動失調が生じます。

 

大脳皮質‐小脳回路のメカニズム

大脳皮質ー小脳回路

この赤い回路が大脳皮質‐小脳回路の経路です。

 

まず、人が動作を行おうと思たっと時、

まず、上前頭回にて運動の計画を立てます。

 

運動の計画は、前運動皮質に伝わります。

 

運動の計画に対し、前運動皮質では、フィードフォーワード機能として、動作に必要と予測される筋活動を運動指令として出力します。

 

その運動指令は、実際の動作を行うために錐体路に伝わります。

錐体路に伝わることで、動作が実行されます。

それと同時に、同じ運動指令が皮質橋小脳路を介して小脳の歯状核へ伝わります。

 

これにより、小脳へ運動モデルがコピーされ、小脳に記憶されます。

この前運動皮質から小脳への運動モデルのコピーを

 

effrence copy

 

といいます。

 

実行された動作に合わせて、筋からの深部感覚がエラーシグナルとして、脊髄オリーブ路を介して下オリーブ核、下オリーブ核から下小脳路を介して小脳の歯状核に伝わります。

この筋からのエラーシグナルと前運動皮質からの運動モデルを統合し、誤差がないかを小脳で判断します。

つまり、

考えていた運動のパフォーマンスと実際のパフォーマンスに違いがないか確認する

ってことです。

 

小脳で統合した結果、誤差があった場合、運動モデルが書き換えられます。

その書き換えられた運動モデルは、上小脳脚を介して視床の内側核群(VM)、視床の内側核群(VM)から前運動皮質へ伝わり、フィードバックされます。

 

そこで新たに書き換えられた運動モデルをもとに前運動皮質からもう一度、運動指令として錐体路に伝わり、実際の運動が修正されます。

大脳皮質‐小脳回路 働き

さらに、筋からの深部感覚は、下小脳路を介して小脳の中位核に伝わり、中位核から赤核脊髄路に指令が伝わります。

赤核脊髄路は、錐体路と似た走行をしており、随意運動に関与します。

そのため、赤核脊髄路を介しても実際の運動の修正が行われます。

 

このように、大脳皮質‐小脳回路では、運動プログラムを修正して、制御しています。

 

大脳皮質―基底核回路

大脳皮質‐基底核回路の役割

基底核は、

  • 運動ループ
  • 認知ループ
  • 辺縁系ループ
  • 眼球運動ループ

と4つの回路を形成しています。

運動に加えて、情動など精神機能や認知機能にも関与しています。

 

これらは、すべて独立して機能するといわれています。

運動学習においても学習初期は、

認知ループにて実際の動作を確認し、認知しながら実行するが

運動ループも同時に働き、運動ループでの学習を繰り返すことで

認知ループの働きは減少し、運動ループを使用した動作の出力に置き換わる。

このように4つの回路が並列して、同時に働き、運動学習に関わっている。

 

運動プログラムにおいて大きくかかわるのが運動ループです。

 

運動プログラムにおける大脳皮質‐基底核回路は、

運動を遂行するうえでの順序や組み合わせを制御する

引用:市橋則明 運動療法学 第2版 文光堂、139 2008

と言われています。

 

つまり、

運動をやる、やらないを決めるのがこの回路です。

大脳皮質‐基底核回路にて選択した運動に基づいて、予測的姿勢制御(apa’s)が働き、実際の運動を実行します。

そのため、apa’s機能にも関与し、姿勢制御から見ても大きな役割を担っています。

 

さらに基底核は、黒質緻密部より情動信号をもたらすドーパミン作動系の影響を受けます。

そのため、動作によって報酬や成果が得られるかが大きく関与してきます。

 

運動学習においてモチベーションや報酬の有無は、重要になってくるということです。

 

運動による成果が得られることで強化学習に基づく運動学習に関与します。

 

加えて、ドーパミン作動系は、行動の情動的側面をになう辺縁系ループや、前頭前野ループにおける認知機能にも影響してきます。

 

また、基底核から脳幹への投射する経路もあります。

基底核から脳幹の中脳歩行誘発野(MLR)、脚橋被蓋核(PPN)へ抑制する指令を出しています。

 

MLRは、CPGを賦活させる役割があるため、歩行に大きく関係します。

PPNは、筋緊張を抑制する役割があり、筋緊張の調節に関係します。

また、PPNの周囲には、眼球運動、嚥下、発声など生理的運動を調節する機能が関与する部位があります。

 

そのため、

歩行などの生理的運動や筋緊張の調節する役割も担っています。

 

 

運動プログラムにおける基底核の役割は、

  • 運動の選択
  • apa’sによる姿勢制御
  • 報酬が得られることによる強化学習に基づいた運動学習
  • 歩行など生理的運動、筋緊張の調節

 

大脳皮質‐基底核回路の障害・症状

この回路が障害されると

運動の選択が遅延したり、困難になるため、

運動の開始が遅くなることや不随意運動などが生じます。

 

apa’sの働きにも大きく関与するため、姿勢制御も影響受けます。

 

また、歩行障害、筋緊張の調節が困難となり筋の過緊張なども見られることがあります。

 

大脳皮質‐基底核回路のメカニズム

大脳皮質ー小脳回路

この緑の緑の経路が大脳皮質‐基底核回路です。

 

大脳皮質‐基底核回路も

上前頭回からの運動の計画が前運動皮質へ伝えられます。

 

前運動皮質から基底核へと運動指令が投射されます。

 

基底核内に選択された運動が基底核から視床の前腹側核(VA)へ投射される。

 

さらに、視床の前腹側核(VA)から前運動皮質に投射され、

補足運動野(6野)への情報によりapa’sが働き、選択された運動に必要な姿勢調節を行います。

 

続いて、基底核内の詳しい経路を見ていきましょう。

 

基底核回路

基底核内の回路としては、主に3つ

  • ハイパー直接路

大脳皮質から視床下核を介し、淡蒼球内節・黒質網様体部へ興奮性の入力

  • 直接路

大脳皮質から線条体を介し、淡蒼球内節・黒質網様体部へ抑制性の入力

  • 間接路

大脳皮質から線条体、淡蒼球外節を介し、視床下核へ抑制性の入力

 

 

この3つの経路がバランスよく働くことで、

興奮と抑制により淡蒼球内節・黒質網様体部の働きが調節され、

不必要なプログラムは抑制され、必要なプログラムだけが選択されます。

 

淡蒼球内節・黒質網様体部から抑制性の入力を視床の前腹側核(VA)を行い、

視床の前腹側核(VA)から大脳皮質の補足運動野(6野)、一次運動野(4野)へ投射されます。

 

これにより必要なプログラムのみが大脳皮質へ送られ、正確なタイミングで必要な動きのみを実行することができます。

 

基底核内の線条体は、黒質緻密部からの入力も受けます。

黒質緻密部からのドーパミンが入力され、直接路と関節路の働きを調節しています。

 

淡蒼球内節・黒質網様体部は、視床だけでなく、脳幹への投射も行います。

基底核ー脳幹経路

脳幹にある中脳歩行誘発野(MLR脚橋被蓋核(PPNに対して

抑制性の入力を行っています。

 

中脳歩行誘発野(MLR)は、

CPGを賦活させる役割があり、歩行の誘発に関与します。

 

脚橋被蓋核(PPN)は、

筋緊張を抑制・下げる役割があります。

 

淡蒼球内節・黒質網様体部は、抑制性の入力を出すため、

淡蒼球内節・黒質網様体部の働きが

 

大きくなる → MLRの働きが抑制され、歩行がしにくくなる

PPNの働きが抑制され、筋緊張が亢進する

小さくなる → MLRの働きが大きくなり、歩行が誘発される、

PPNの働きが大きくなり、筋緊張が下がる

 

また、中脳歩行誘発野(MLR)から筋緊張を促通する経路があり、

その経路が脚橋被蓋核(PPN)からの筋緊張抑制経路と関与しており、

この2つの経路によって筋緊張の調節を行っています。

 

このように淡蒼球内節・黒質網様体部から脳幹部への投射によって、歩行の調節や筋緊張の調節を行っています。

 

このように大脳皮質‐基底核回路にて運動の選択や歩行・筋緊張の調節などに関与しています。

 

まとめ

今回は、運動学習に重要な、大脳皮質‐小脳回路、大脳皮質‐基底核回路を神経経路、役割についてまとめました。

運動学習に必要な回路のポイントは、

  • 大脳皮質‐小脳回路

運動指令と感覚情報を統合し、修正する役割がある。

障害された場合、フィードフォーワード、フィードバック機能が障害される。

障害された場合、運動失調、予測的な筋緊張が調節が困難となるなどが出現する。

  • 大脳皮質‐基底核回路

運動の選択、歩行や筋緊張を調節する役割がある。

報酬系が運動学習に関与する。

障害された場合、運動の遅延、不随意運動などの症状が出現する。

 

この2つの回路が障害されることで運動の学習が進まないこともあります。

また、実際に症状がみられる場合でも、

もう一度、臨床の現象が脳の障害からくるものなのか、どうかを考える必要がありますね。

 

また、神経回路を理解することで、症状の原因がわかることで、治療の選択や、症状に対する考え方が変わるかもしれません。

 

そうすると、関わり方や、取らえ方をより広い視点から見ることができると思います。

より臨床の幅が広がると思うので、参考にしてみてください。

 

 

 

 

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